2月7日(水) 「神楽に学ぶ伝統の継承」第4時
まずはお詫びさせてください。
2月5日(月)に15分だけ時間をとり、単元を通して子どもたちが作っていくものを示すと共に、単元名を子どもたちと考えました。
その時の板書がこちらです。
そして、子どもたちが「附属小伝統事典」と銘打ったものがこちらです。
これがなぜ「事典」となっているかと言うと、子どもたちが作ったものを本にして学校図書館に置くことを予定しているからです。この「事典」も「図鑑」にするかどうかで議論が起こりましたし、私が「辞典」と書いてしまった時に、「先生違います、『事』を集めるんだからそっちじゃありません」と注意を受けたほどです。
単元名についても、あーでもないこーでもないと多様な意見が出ました。それは板書をご覧いただけるとわかると思います。ここに書かれている案は一部です。
こうやって子どもたちのこだわりが詰まったものだからこそ、子どもたちにいちいち単元の目的を確認しなくとも自律的に学んでいけるのではないかと考えています。
さて、ここからが第4時のお話です。
4時間目は、神楽のことをじっくり見つめ直す時間としました。これまで、インプットの時間が多かったので、子どもたちには、友達とアウトプットしながらまとめる時間が必要だと考えました。実際、子どもたちも「『神楽から学び』にするためには、もっと神楽のことを知らないといけない」と次時の見通しをもっていました。こういったところにも、単元を自分事として捉えることの大切さが現れてくるのではないかと考えています。
また、今回、調べ始める前に「樅木神楽から調べる人?」などと尋ね、子どもたちが自由に席を移動することができるようにしています。目的は二つあります。一つ目は、子どもに選択権を与えることで、自律的な学びを促すためです。教師から与えられたものを受動的に学ぶのではなく、自らの意志によって選び、学ぶことの積み重ねが自律的な学びの第一歩であると考えます。二つ目は、協働的な学びの促進です。同じ目的意識をもった人と学ぶことで、相談したり、議論したりしやすい空間をつくることができます。また、違う対象を追究している子どもがどこにいるのかも明示することも、同様に大切な手立てであると考えます。
「個別最適な学びと協働的な学び」は一体的な充実を図っていかなければなりません。社会科は社会的事象に対する問いが様々出ることから、「個別最適な学び」は比較的やりやすい教科ではないかと考えます。しかし、子どもたちが個別に学んだことが協働的な学びの中で生かされなければ、(個別の学びをいわゆる発表会的にアウトプットするだけなのであれば)それは一体的な充実とは言えません。協働的な学びには子どもたちの心理的、物理的な距離がとても重要になってくると考えます。そういう点からも、教室内で寄り集まりながら学ぶような時間が必要だと思います。
またまた、前段が長くなってしまいました。それでは、子どもたちの学びの様子をどうぞ。
T :みんなで考えた単元名が…
CC:神楽から学び附属小伝統事典を作ろう!
よしお:今回の単元の目標はこれだよ(欠席していた子どもに)
T:みなさんは神楽を学んでるんですけど、「神楽から」何を学ぶんですか?
CC:(学びの足跡を見ている)
CC:受け継ぐこと…
C:受け継ぐことのよさ
しゅう:受け継ぐ気持ちとか
れいじ:伝統とか
しゅう:何かその見えないもの
としお:受け継ぐよさとか受け継ぎ方とか
T :受け継ぎ方ね。その中にはさっきしゅうくんが言ってくれたみたいに見えないものね。「思い」とか
CC:気持ち
ゆうや:思いと気持ちは一緒かな
CC:願い
T :「気持ち」
しゅう:それが分かれば附属小の伝統も
T :これが分かっていくと附属小も
CC:よりよくなっていく。
T :よりよくなっていくんですね。ただ、まだそこまで神楽のことが分かっているわけではないので、この時間は、神楽のここ(思いや願い)をしっかり調べていくという時間でよかったですか?
CC:はい。
T :わかりました。見通しとして、今日は何のために神楽を調べるかというと、いつも視点づくりしていますよね。
CC:はい。
CC:あぁ~
T :次の時間くらいには視点ができておくと、いいですよね。
CC:はい。
T :みなさんは、これ(附属小の伝統)を
CC:受け継ぐ人
しゅう:受け継ぐ側の人
T :そうですよね。だから視点としては、「受け継ぐ人」としての視点ですよね。受け継ぎ方がめっちゃ上手な人はどんな視点をもっているのかってことだよね。
すすか:何か未来に今の伝統を伝えられる人
T :いいね。今すずかさんが言ってくれたような人を神楽から学ぶんだよね。受け継ぎ方がめっちゃ上手な人がもっている視点が何か分かるように調べてくださいね。
T :立福寺神楽と樅木神楽があったでしょ?今日は、どうやって調べますか?両方?それとも片方ずつ調べてあとで共有する?
CC:それがいい!
CC:両方がいい!比べられるから。
T :共有の時間はどれくらいいる?
CC:10分
T :振り返りも書きたいから… 3時まで調べて10分で共有して、視点になりそうなことを振り返りを書きましょう。
T :樅木神楽から調べようと思っている人?その人たち集まって調べていいよ。立福寺の人?
CC:樅木やろー
CC:立福寺やろー
T :今思いついたんだけど、土曜日の研発の授業に来られた先生方が待っている間に神楽の宣伝しない?
CC:いい~ めっちゃいい!
としお:そしたら、立福寺神楽を見に行く人が増えるかもしれない!
けいご:先生まとめといてもいいですか?
T :いいね~
(グループをつくって調べ始めている)
【よしお・ゆうと・しゅう】グループ
よしお:ちょっとあっち(学びの足跡)を見返してから考えてみようかと思ってるんだけど。
しゅう:あそこ(学びの足跡)中心にやるってこと?
よしお:あそこ中心だけど、新しい情報も得ながらって感じかな?
しゅう:なるほど。
ゆうと:なぜ神楽を舞うのか なぜ神楽を舞うのかは、豊作祭だからだっけ?
よしお:ちょっと題名書くから待って
ゆうと:いいよ。好きなようにしていいいよ。
しゅう:主な公開は10月15日…
T :樅木神楽のことが書いてあるページを見つけたそうなので、みんなにも送りました。
しゅう:先生立福寺神楽も見つけました!
T :OK 送って。
ゆうと:豊作祭があって、その年の新米をお供えすること。
T :立福寺神楽を送っといたよ
しゅう:樅木から見る?
T :事実から思いを考えようね。例えば、毎年10月15日にしているのは、こういう思いからです。みたいな。
ゆうと:まだそこまでいってません。
T :全然大丈夫だよ。例えばの話ね。
しゅう:でも、それを考察すれば…
T :そうね。あっち(立福寺神楽)は絶対変えないって言ってたもんね。
よしお:あっちはもしかすると、昔の伝統を受け継いでいきたいなって…
T :じゃあこっち(樅木神楽)は?
よしお:神楽自体を残したいみたいな。
しゅう:もしここに(樅木神楽)にこの人たち(立福寺神楽)がいたら反対すると思うんですよ。
よしお:うん。こっち(樅木神楽)はかたちを残したい。
T :かたち?
よしお:神楽
T :こっち(樅木神楽)は神楽を残したい。
よしお:あっち(立福寺神楽)は、神楽の中の伝統を残したい。
しゅう:こっち(樅木神楽)は神楽本体を残したいのと、伝統も守りたい。神楽もだけど。
よしお:もしこれが入れ替わってたら学校で神楽をやるっていうのはなかったかもしれない。
ゆうと:おぉ~
しゅう:多分さ立福寺神楽はさ、どっちも守りたいから、それをどんどんやっていくうちに、それがどんどんなくなっていって、最終的に8人になってるんだと思う。
れいじ:今どっちやってるの?樅木?
よしお:どっちも
よしお:(学びの足跡をじっとながめる)
しゅうとゆうと:(「樅木神楽復活物語」の資料を読む)
よしお:やっぱさでもさ。ちょっと言っていい?
ゆうと:何?
よしお:6時半から9時…ってこれは元々なのか…
しゅう:あった!
よしお:ちょっとあのさ、6時半からっていうのは元々だったっけ? みんなが見やすいために変更したんだっけ?
しゅう:う~ん…
ゆうと:なぜ樅木が神楽をするのかを調べてるの
よしお:それは、樅木神楽を伝えたいという強い気持ちがあるから。
ゆうと:そうじゃなくて、何で樅木神楽をするのかっていうこと。
しゅう:やっぱりネットには見せない思いがあるのか!
ゆうと:「樅木神楽 舞う理由」で調べてみて。
(なかなか思うようにいかず…)
よしお:(学びの足跡をながめる)
※ここで子どもがマイクをさわってマイクをOFFにしてしまいました…
振り返りの直前から再度紹介します。
T :さて、そろそろ振り返りですが、今日はどんなことをみんなと共有し合いたいですか?
C :視点?
T :視点までいけそうかな?
CC:思いとか…
T :そっか、今日はまだ視点までは行けてないかな?それじゃあ、それぞれの神楽に込められた思いとか願いを振り返りに書いてください。
CC:はい。
T :その前に、今日の授業でもやもやが増えたかなって人?(3~4人)
ちょっとすっきりしたなって人?(10人くらい)
今日、ワクワクしたぞって人?(20人くらい)
OK、じゃあちょっと振り返りに書こうと思っていることをしゃべってから振り返りを書きましょう。
そして、子どもたちが書いたのが以下の振り返りです。
それぞれのグループで様々なところに着目しながら、樅木神楽や立福寺神楽のことを捉え直している姿がありました。こうした気付きを得た子どもたちがどのようなこだわりをもってかかわり合っていくのか楽しみです。
次時はいよいよ研究発表会本番です。正直もうちょっと神楽の事調べたりないと思っているようですので、もうちょっとだけ家庭学習や朝自習の時間などで調べる時間をとろうと思います。
それでは、研究発表会でお待ちしています。
今日も、ありがとうございました。
ご意見等ありましたら、メールをいただけると嬉しいです。
熊本大学教育学部附属小学校 村上春樹
hmurakami@educ.kumamoto-u.ac.jp
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