小学校社会科6年 「地球規模の課題と国際協力」第2時間目

 地球規模の課題と国際協力 第2時間目

 

いよいよ来週1月25日の参集型の授業公開日が迫ってまいりました。

まだ人数限定ですが,若干の空席があるようです。下記申込フォームからお申込みいただけます。

 

さて,授業も2時間目となりました。研究発表会当日まで,このブログを使って子どもたちの様子を紹介していきたいと思いますので,興味をもたれた方は,是非,本校の研究発表会にご参加いただければと思います。

申込はこちらまで→https://elem.educ.kumamoto-u.ac.jp/the_study/

 

さて,今回も単元の話に入る前に少しだけ,授業に対する私の思いを書かせていただきます。

今回は,「自由度」についてです。

社会科の授業を考えていると,様々な資料や人に出合います。そして,「これは子どもたちに出合わせたい!」と教師は思い,出合いの場を設定して,子どもたちを揺さぶったり,新たな気付きを促したりします。

これは,教師の手立てとしてとても重要なものだと思います。しかし,いつもそれを教師がやっていては子ども自身が社会的事象に立ち止まることができなくなってしまうのではないでしょうか?

子ども自身が社会的事象に立ち止まることができるようになるためには,子どもが多くの社会的事象に触れなければなりません。その社会的事象の幅が「自由度」です。

社会科の内容は複雑系ですから,すべてを見せてしまえば,学習は焦点化せず,学ぶべき内容にたどり着かない子どもも出てくるでしょう。しかし,その幅が狭すぎると,教師が与えた資料という限られた範囲の中でしか学ぶことができず,汎用的な概念の獲得は難しいと言わざるを得ません。

ドッヂボールにたとえてみます。ドッヂボールのコートが広すぎては,守備側に有利過ぎて,子どもは楽しくないですし,ボールを避ける動きもボールを投げる動きも身に付かないでしょう。逆に狭すぎたらどうでしょう。先ほどよりましな気はしますが,今度は攻撃側に有利過ぎて,あっという間にゲームは終わり,楽しめずに終わってしまいそうです。

では,丁度良い広さとはどうやって決めるのでしょうか。これは,やはり子どもの実態を見取ることと教材研究に尽きると思います。

どれくらいの幅で授業をすれば,子どもが自ら社会的事象にかかわっていくのか。その幅の中にどのような要素が入っていれば,子どもたちが自ら「えっ!?」や「あぁ~」に出合い,それを基に友達と対話しながら自分の考えを再構成していくような学びになるのか。

そんなことを考えながら授業づくりをしているところです。

 

 第2時間目は,その幅を子どもたちと調整する時間です。

2時間目(1/17) 【主題をつくり,見通しをもつ】

 

初めに前時の振り返りをいくつか紹介し,その後,中村哲さんの活動を振り返っていきました。中村さんが活動に至るまでの思考を辿ることで,自分たちが「自分にできること」を考える際には,同じような思考過程を辿ればよいということに気付くことができるようにしました。

 

 T    今から自分にできることを考えていくんだけど,入り口としては…

 C    どこで何が起こっているのかとか…

のぼる  国の問題

 T    なるほど。これを最初に調べて行ったらよさそうだね。

        調べ方の方法としては,ななみさんやはづきさんがやっていたのが参考になるね。

        ななみさんはどうやってたっけ?

ななみ  外務省の渡航危険区域みたいなのを調べました。

 T    だったね。翠巴さんは何だったけ?

ななみ  健康寿命

 T    そういうのを調べてから,自分が調べたい国を決めるというものいいかもしれませんね。

        じゃあ,この後は何になりそう?

たくま  問題の原因を調べる

 T    OK これを調べていたら中村さんたちみたいなのが出てくるのかな?

        中村さんみたいな活動をしているのをNGOと言います。非政府組織って意味ね。

        他にどんなのがありそう?

まさみ  NPO

 T    非営利団体だね。

まさと  ユニセフとか

 T    そうだね。日本もしてもらったやつね。国連の機関だね。

 T    資料集に載ってるやつで,JICAっていうのがありますね。

        こうしたものの活動が見えてきますよね。そして,これらを?

たくま  自分たちができることに変える

 T    これらを参考にするんだね。

まさみ  なんかミニミニみたいな。

のぼる  それを自分たちにできることにする。

たくま  結局④(自分たちにできること)の時にはクラス全体でするんですか?

 T    なるほど。みんなはどうしたいですか?

        確かに,「自分たち」ってしちゃうとみんなが入っちゃうね。

たくま  個人で案を考えるのか,それともクラス一つ出して考えるのか。

 T    みんなはどっちがいい?

C C  (それぞれ話している)

まさと  個人だと…

C C  (それぞれつぶやく)

まさみ  個人でやってそれを共有すればいいんじゃない?

C C  あ~

 T    じゃあこれは,自分一人でできるものでもいいってことね。

        それぞれ考えるからね。でも,できれば…

たくま  みんなができるものがいい。

 C    班でやるくらいでもいいんじゃないかな?

 T    これで流れはなんとなくできましたね。

        この中村さんがやってることって,最初の治療ってSDGsで言うと何番かな?

さなこ  3番

 T    そうだね。じゃあこれ(井戸や土木)は?

ななみ  それは,6番とか…

C C  3とか15とか

たくま  あと2?

ゆうし  3もなんじゃないかな

 C    4も!

けいた  11も

 T    色々つながってくるわけね。じゃあすっごい素敵なやつって1個じゃないんだね。

 C    そうか…

 T    これをまとめるときにSDGsごとにまとめていくのはどう?

 C    あぁ~

 T    提出箱を17個作って。ぼくの「自分にできること」は1番だな。みたいな。

のぼる  複数あるときはどうするんですか?

 T    全部に入れていいんじゃない?

こうき  全部に当てはまるやつとか。

C C  えぇ~

ここみ  17は当てはめにくいなぁ

ひかる  まったくもって関係性ないやつもあるからさ…

まさみ  とりあえず一回やってみたい。

 

この後,単元の主題を決めて,調べ学習に入ります。

その中で,以下のようなやり取りがありました。

 

たくま  先生!例えば,班でやりたいって人だったら… それとも一回全部一人でやった方がいいんですか?

 T    どうする? グループを作るとしたら,どこを調べてるときに作れそう?

まさと  みんな被ってくる可能性もあるから…

たくま  最初から…

C C  (それぞれつぶやく)

 T    国や問題を考えてるとき? それとも最後のところ?

たくま  地域ごととかにしてもいいかなって

まさと  確かに…

 T    地域が違っても同じような問題もあるかもしれないよね。

たくま  最初から決めていた方が進めやすいじゃないですか。

 T    でも,たくまくんがやりたいこととなつきくんがやりたいことが違ったら嫌でしょ?

たくま  そうか。

ゆうこ  共有したときに同じような感じの人が集まればいいんじゃないかな?

 T    うん。それでいいかな。どこで共有するのかだね。

たくま  例えば10分調べて,共有する時間とってそれから集まるみたいなのがいいかな…

 

最後に中間発表に話題が移しました。

 

 T    あっ最後に,中間発表どうしますか?

C C  やりたい!

のぼる  これで本当にいいのかわかんないから,やっといた方がいい。

 T    OK。そのためにはポイントが必要だよね。

        いい「自分たちにできること」のポイントって何?

はやと  実現可能か

C C  いいね~

まさみ  それを続けられるか

 T    いいですね。

のぼる  可能かってしたいから… 持続可能か は?

 T    SDGsっぽくていいね。他には?

けんた  課題が解決できるか

のぼる  解決可能か!

けいた  「可能か」ばっかじゃん!

 T    終わり?

ゆうこ ニーズに合うか

 C    それ交通渋滞の時もあった

のぼる  可能か にならないな…

 T    他にありますか?

けんた  やっていったら増えるかもしれないのでいいと思います。

C C  おぉ~!

 T    じゃあこの4つのポイントで自分の「できること」を振り返りながらやっていきましょう。

        では,残りの時間,もう少し「自分たちにできること」を考えて,振り返りを書いて終わりましょう。

 

 中村哲さんの取組を基に単元の流れを考えてきたことで,はじめに地球規模の課題や,そこで行われている国連やNGO等の取組を調べ(ここまで学習内容),その後,自分たちにできることを考える(選択・判断)という文脈となりました。そのため,例えば中村さんが行っている活動が,SDGsの様々な目標につながるという考えが子どもたちから自然と出てきました。SDGsの目標から入ると,どうしてもそれぞれの目標が個別であるような感覚となり,また,解決したい国や地域の人がなかなか見えてきません。そのため,今回のように,実際に活動を行っている人の文脈に子どもたちを乗せることが大切であると考えます。ただ,今のところ子どもたちは,「治療」と「井戸や土木工事」を同じ「支援」という枠組みで捉えています。学びを進めていく中で,「治療」は即時的な支援であり,「井戸や土木工事」は自立に向けた支援であるというような分類ができるようにしていきたいと考えています。

 また,これまでの単元で活動に対する相互評価の場である「中間発表」を行ってきていました。本単元でもその活動について提案したところ,「やりたい」という声があがり,すぐに評価のポイントを挙げる子どもたちの姿がありました。中でも,「まだ増えるかも」という発言は,自分たちで活動を調整しながら学んでいく姿の表れであると考えます。

 次時では,本物の人から学びたいという子どもたちの声にこたえる形で,元JICAで青年海外協力隊として活動をされていた渡邉さんに出会わせます。渡邉さんの活動を基に,「自分たちにできること」のヒントをもらうとともに,自立に向けた支援とは何なのかを考えるきっかけとなるようにしていきたいと思います。



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