地球規模の課題と国際協力 第5時間目
1月25日に公開授業を行いました。今回は,その授業の様子をお届けしようと思います。なお,2月18日の研究発表会に向けて,2月11日から授業動画を公開します。授業動画では,公開した第5時を30分程度に編集したものと,導入から前時までを15分,そして,相互評価の時間を15分に編集したものも視聴することができます。このブログで読まれている子どもたちが話している様子を見ることができます!
子どもたちの学びの様子に興味をもたれた方は,是非,本校の研究発表会にご参加いただければと思います。
申込はこちらまで→https://elem.educ.kumamoto-u.ac.jp/the_study/
さて,今回は早速内容に入っていきたいと思います。そのままだと,A4で10ページになってしまいましたので,一部のみ紹介していきます。
5時間目(1/25) 【支援の在り方について捉え直す】
前時の振り返りを読んださなこさんが,「募金の何が持続可能なのかが分からない」と話していました。そこで,さなこさんになぜそう思うのかを聞いてみると,「私たちはアフリカの人が自分たちでできるようにしているけど,募金したあとどうすれば,持続可能になるのかが分からない」と答えてくれました。このことから,やはり,子どもたちの中で,「持続可能」の立場がずれていること分かりました。そして,そこに気付いているからこそ,さなこさんたちのグループは話し合いがうまくいっているのだと思いました。そこで,5時間目の導入は,さなこさんたちのグループがなぜ話し合いがうまくいっているのかを明らかにすることから始めることとしました。
T 前の時間に「自分たちにできること」を考えていったんですけど,何となく先が見えているグループとちょっと行き詰ってるグループがあったじゃないですか?アフリカのことを考えているグループはわりと先が見えてきそうだってことだったんだけど。アフリカのグループの人たちは,他のグループの振り返りを読んでみて,何か違いみたいなのはあった?
さなこ アフリカの方が持続可能のことを詳しく考えていて,解決策も見つかってきている。
T みんなも持続可能は考えてたもんね。
まさみ 考えてるんですけど,明確な解決策が生まれてないんですよ。
T アフリカチームが考えている持続可能ってどういうことなの?
ななみ 例えば,植林しようってなったら,木々が生い茂ってる時間を保たなければいけない。
(中略)
さなこ ずっと安定な収入を得られるっていうのをアフリカでは考えてて
まさみ こっちは,ポリマーが環境にいいのだとか,そのポリマーを埋めてもずっと使い続けていけるのかとか
T じゃあこれ(ポリマー)を使い続けるっていう持続可能。
こっちは?
さなこ ポリマーとかはずっと使ってたらいつかはなくなってしまうから,種の使い方とかだったら伝統的に受け継がれていくから,いつまでも使える。
T 受け継がれる。
まさみ ポリマーは高いし,実現するのが難しいじゃないですか?
種とかだったら,種が手に入りさえすれば,渡すことはできるから。
T 値段の問題?
まさみ 値段だけじゃなくて,技術でも。
たくま 35人でポリマーをどう買って,どう送るのかっていうのも。
T じゃあ,こっちの続けるっていうのは,受け継がれるっていうのは,誰が受け継いでいくの?
さなこ アフリカの人たちが伝統的に。
T じゃあ,こっちはアフリカの人たちね。やる人がこっちはアフリカの人ってことね。
こっちは,ポリマーを送り続けるってこと?
まさみ ポリマーを送り続けたり,地面に入れたりもするし。種を植えることよりも大変なことだから。
T なるほど。こっちは送り続けるだから,これは誰ね?
まさみ 私たち
たくま アフリカ以外の人たち
T 現地の人たちじゃないってこと?
まさみ 支援する人たち
T あぁ支援する人たちね。
同じ「持続可能」っていうのを言ってたんだけど,上手くいってるグループは,支援する人たちが持続可能って考えてたんだね。そこがちょっとずれてたんだね。
今から,グループに分かれてこっちの視点(支援する人たちが持続可能)で行けそうかどうか確かめてみませんか?
こないだと考えること変えている人いる?
いないなら,そのまま行ってみましょう。
【グループでの活動】<砂漠化を考えているグループ>
まさみ 植物だったらさ,植物が繁栄させるために種を作ったりするじゃん。自分で。だから,これがいいんじゃないかな。
T 現地の人がするのと,自分たちがするのでは,どっちがいいの?
まりこ それだったら,現地の人がする方が
まさみ そうそう。やっぱり植物の方が…
まりこ あの。私たちが,私たちはどこって決めてないけど,送るとしたら,いつまで…
まさみ 例えば日本が戦争にあったりしたら,送ることができないから
まりこ 途絶えてしまうから
T なるほど,支援ができなくなることもあるんだ。
まさみ だから,やり続けるんだったら,こういう植物の方がいい。
かける やりやすい。
T こっちの支援がなくなっても…
まさみ 向こうの人が自立してやれるような。
T そういう支援の方がよりよいってことね。
まりこ それを私たちが自分で試してできるかどうかをあれしないと
まさみ 根拠なしにしても
まりこ むやみに渡すのは…
まさみ 向こう側が迷惑…
(中略)
【全体】
T 今,共通点として,こっち(支援する人たちが持続可能)がよさそうなのはわかるんだけど,なかなかこっち(自分たちにできること)に行けないって人が結構いて… はやとくんどうぞ。
はやと 僕たちは水問題を解決しようと思っていて,渡邉さんが言っていたようにマラウイには安全な水が出る井戸があるわけじゃないですか。その水を家に持って帰る時間が長いから困ってるって言ってたじゃないですか。それで,調べて見たらQドラムっていうのがあって,そのQドラムっていうのが65ドルするらしいんですよ。それでカードゲームでやって人たちの給料がだいたい50ドル。5千円だから。そうなったときに,その人たちはQドラムが買えないわけじゃないですか。だから,Qドラムじゃない便利なものを作ろうと思っていて,その時は,支援する人じゃないですか。
T ちょっと待ってね。これを送るってなったら,誰の立場?
C C 支援する人
T 送り続けるってなるとそうだね。
まさみ Qドラムって使いきり?
T 使いきりではなかったよね。
はやと はい。壊れやすいし,高い。
そして,支援する人の立場なんですけど,やっぱり持続可能ってなるとアフリカの人の立場でやった方がいいじゃないですか。けど,アフリカの人の立場に立って考えるっていうのがちょっと難しくって。
何か,こういうのがきっかけで,アフリカの人の立場に立てたよっていうのは何かあるんですか?
T 何がきっかけで,こっちの方(アフリカの人の立場)の考えになったのかっていうことなんだけど。
ゆうこ そのまずまず,そっちの方で考えようってなってて。それに当てはめていったらなってた。
さなこ 渡邉さんの話を聞いて,石けんづくりとか手洗いの歌とかは,結構アフリカの人のことを思ってる。
T ここ?ここがポイントになったの?それで,アフリカの人たちがってことになったのね。
でも,最初教育とか言ってなかったけ?
ひろこ 最初は,親の… ちょっと小さいから…
T ちょっと待ってね。これ?
ひろこ はい。貧しさの連鎖ってあるんですけど,私たちが…
一番最初私たちが考えてたのは,「子どもの労働力に頼る」っていうのを,義務教育をちゃんと受けさせようって話になったんですよ。でも,親の収入が安定しないと,結局子どもたちの労働力に頼ることになっちゃうから,親の収入を安定させるために,まず私たちが何ができるかっていうのを考えたとき,伝統的な布や,渡すたちが種を送って,育て方を教えたりとか,アフリカの人たちが受けつげるようなことができればいいなと思って,こういうのを考え付きました。
T ここ(子どもたちの労働力に頼る)を解決したいってなったときに,一歩前のところを考えたってことかな? 今,これは貧しさのことしかないから,貧困のこと考えている人はそのまま当てはまるけどね。
はやとくん今の聞いてみて,どうだった。次できそうなことってなんだろう?
はやと 水問題の原因を調べて,そこをやる。
T なるほど,これの水問題バージョンを考える。
砂漠チームはどう?使えそう?
ななみ (タブレットを見せる)
T 似たようなのがあった?
ななみ はい。
T ということは,現地の人たちがやるような… これ何て言おう?
現地の人たちがやるような支援。
まりこ 現地支援…?
T 現地支援?
まさみ 持続可能な支援
T でも,それ立場がわからん。これもそうだし。
たくま 伝える支援 何も送るわけじゃなくて,伝えるだけでいいから。
のぼる 問題によって,その,本人たちができる解決方法みたいな。
T 本人…現地の人か,現地の人たちができる解決方法。
T こんな感じ。
ゆうこ 渡邉さんは,言ってたやつを見て,渡邉さんは2年いて帰ってきたけど,アフリカの人たちに教えるとか多分今でも続いてるだろうから,そういうのを見たら,アフリカの人たちが自立じゃないけど,アフリカの人たちだけでもできるようなことを考える。
T 自立… 自立できる支援?そんな感じ?
ゆうこ 自立じゃないけど…
まりこ 自立を援助する支援
はやと 自立支援
T 自立支援?
はやと おぉ~!
T おぉ~ってなってたけど,自立支援でいいですか?
C C (うなずく)
T じゃあカギかっこで「自立支援」としましょうか。現地の人が自立するような支援ってことね。
このポイントは?なんだっけ… 原因を考えるか。
これをすると,ここ(自立支援)が行けそうですか?
じゃあ今日は,自立に向けた支援を原因を考えながら考えていくってことでいいですか?
引き続きグループで行ってみましょう。
【グループでの活動】<砂漠化を考えているグループ>
ななみ これを止める
まさみ 根本的な理由をまず探して,それを最初に食い止めるでしょ?それ以上に悪化しないようにすればいい。
ななみ 公的要因は無理だから。
まさみ それはしょうがないよね。
まりこ 原因を調べたら。で,これを身に付けて,で,これがどれに合うかをやればいいんだ。
ななみ 間接的要因はいいかな。直接的要因の方がどちらかというと。
まりこ 気候的要因だってよ。やっぱこれだよ。
T おぉ~ ここどこ?
原因の中に貧困が入ってるわけ?
ななみ はい
まさみ だって,貧困だから,森林を伐採して
まりこ お金にする。
まさみ だから,根本的にはつながるんですよ。それが出てる方向がちがうだけで。
T それってどういうこと?
まさみ だから,貧困は貧困でも,だから砂漠化になるとか,だから飢餓になるとか
T いずれにしても,この辺(貧困)をちょっとどうにかしないといけないってことか。
経済状況の悪化も結局貧困だよね。
ななみ 同じ。
T ちょっと見えて来たんじゃない?さっきよりはね。
まりこ 砂漠化の前に貧困っていう原因が
まさみ 最初の原因を調べて,それを…
まりこ 一回まとめよう。
(中略)
T どう?解決策いけそうなのあった?
まりこ なんか,ローテーションなんですよ。
まさみ だから,最初を見つけるのが難しい。
まりこ だから,火事とか災害とかで,家とかが失って,東南アジアって砂漠が多いんですけど,自然災害の危険度が高いんですよ。
T 砂漠化によって?
まりこ 元々自然災害の危険度が高くて,自然災害とかが起きるから,家とかを失って,家計を維持するために,お金儲けをするために,森林を伐採して
まさみ それで,砂漠化がどんどん進んでいく。
ななみ それで,人口も減って…
まさみ それで工場も閉鎖されて,そのせいで働けない人がいるみたいな。
まりこ それが全部ローテーションなんですよ。
まさみ ローテーションと言うか悪循環みたいな。
T あれ(貧困の連鎖)みたいなんだね。で,どこを止めたらいいか分からない。
まりこ マラウイみたいに,砂漠化も悪循環なんですよ。
T どこにあなたたちが
まさみ どこでせき止めたらいいのか…
T どこに入ると一番効果的なんだろうね。
(中略)
まさみ やっぱ貧困はこれだ。教育とか,あっ医療もだね。マラリア,はしか。
まりこ だから,医療だよね。中村さんとかさ,その国のめっちゃ救いだよね。
ななみ だって,難民も多かったんだもんね。
まりこ 哲さんに会いたかった。
まさみ 話を聞きたかった。
まりこ さぁこっからどう考える?
ななみ どうしよう…
まさみ だって私たちがお金を集めたところで… お金を渡すからいけないんじゃないの?
ななみ 実物を渡したとして…
まさみ だって,お金に頼ってしまうじゃん。いつかもらえるんじゃないかっていうので,どんどんそういう世代がすーって。
まりこ でも,お金に頼らないといけない人がいるんでしょ?まず。
まさみ だから,それを根本的にしないといけないじゃん。そういう人たちが増えていくから農業もできなくなっていく。お金にしか頼れないんだから。
まりこ だから,私たちは…
まさみ だから,お金を渡さなくても自立できるようにしてあげないといけない。
まりこ 家庭教師みたいに。
ななみ その場にいって,こっちの方が効率いいですよ~みたいな。
まさみ 私たちが教えに行くのはちょっと…
まりこ だから難しい。
学校に行けてないから知識が足りなくて…みたいな。
ななみ 自然に悪いですよっていっても習ってないとわからない。
まりこ だよね!
まさみ 自然に悪いって言ってもこれしないと俺ら生きていけないんだもん。みたいな。そんなこと言われたってみたいな。
まりこ だからさ,砂漠化って全部の問題が関わってきてない?
まさみ 砂漠化を一つ解決すれば,だいぶ進むんじゃないの?
(中略)
【全体】
T 今日は新しい見方で,「支援」ていうのを見ていきましたけど,次こんなことやりたいなっていうのは見つかってきましたか?
たくま やりたいっていうか,ポイントを見つけたんですけど,アフリカとか… 抱えている問題がアフリカで起きていると思うんですけど,アフリカって発展途上国じゃないですか。アフリカ以外のところに先進国があって,先進国と同じことをすれば追い付くんじゃないかと思ったので,比べてみるってことは大切なんじゃないかなと思う。他の先進国とアフリカを比べてみるってことは大切なんじゃないかなと思う。
のぼる アフリカの気候と似ている国の有名な作物とかを教えたら,それならアフリカでも作れるんじゃないかな。
T 今,二人に共通しているのは他の国と比べるってことね。で,のぼる君は,気候?
のぼる 気候とか環境が似ている国だったら,その国で育てている作物だったら,アフリカでも育てられるんじゃないかなと思って。
T 二人はそういう結論に至ったってことね。もしかすると他の人たちもこんな感じで,問いとかが出てきたかもしれません。今日は,問いとか気付いたこととかを振り返りに書いて終わりましょう。
たくまくんの発言は子どもたちの現在地です。これから,相互評価などを行っていくことで,たくまくんの考えがどのように変化していくのかもとても興味深いです。
本時では,子どもたちは,渡邉さんのお話を思い出しながら,持続可能な支援には立場があることや表出している課題だけでなく,その根本にある課題に目を向けることができるようになってきました。しかし,まだ自分たちのくらしと地球規模の課題の関りについては見えていません。次時以降は,くらしとの関りから解決策を見いだしていくことができるように,子どもの文脈を大切にしながら,私も子どもたちに関わっていきたいと思います。
感想をぜひお聞かせください!
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