子どもたちが前のめりになって「日本全国の自然災害」について調べていく授業~日本の国土と自然条件に対応した公助について考える力の育成をめざして~

 

本校で社会科を研究しています,村上春樹です。

今年度の研究発表会では5年生の「自然災害」についての単元で授業を提案させていただきます。

 

さて,この「自然災害」の単元ですが,学習指導要領には,「これまで我が国においてどのような自然災害が,いつどこで発生したか,自然災害による被害をどのように減らす対策をとっているかなどの問いを設けて調べたり,自然災害と国土の自然条件を関連付けて考えたりして,調べたことや考えたことを表現することである。」との記述があります。つまり,このような子どもたちの姿をめざさなければなりません。

 

左のような子どもの問いは,教師が提示するものではなく,子どもたちが自然災害について学んでいく中で生じてくるものでなくてはなりません。ここでいう「問い」とは,「解決することでより自然災害への理解が深めることができそうだ」という子どもたちなりの目的を達成するために解決せねばならないものです。

しかし,日本の自然災害について調べる際に,「日本の自然災害への理解を深めたい」という学ぶことの価値や目的を子どもたちに明確に実感させたり,もたせたりすることは簡単ではありません。そのため,地元の災害について調べ,その限られた自然災害とそれに関わる自然条件や公助について考えさせる実践が多くなっているのだと思います。しかし,これでは,指導要領に示されている学習内容を習得させることにはなりません。

そこで,今回の研究発表会で私が提案するのが,3つのカードを使った学習です。3つのカードとは,「自然災害カード」「地形等の条件カード」「公助カード」のことです。


それでは,これらのカードを使った学習の魅力と2時間目までの学びについてお伝えしていきたいと思います。

まず,1時間目に日本と世界の自然災害について比較する円グラフを3つ提示しました。その後,グループで気づいたことや生じた問いについて話し合わせると,「災害の種類を調べたい」や「起こる場所やなんで起こるのかを調べてみたい」という「自然災害カード」と「地形等の条件カード」につながる発言がありました。また,「日本は身を守るための努力をしている」「どんな対策をしているのか」という「公助カード」につながる発言もありました。これらの発言から,子どもたちが調べていきたいと考えていることをカードにまとめることでカードが増えていくというイメージをもたせました。そして,「地形等の条件カードが集まったら何ができそうか?」と問いました。

 

Aさん:こんな災害が起こりやすいというのが分かりそう。

 T :架空の町ができるね。

Bさん:そしたら,全部対応できる町みたいな

 T :公助のところかな?公助がどうなるの?

Cさん:自然災害に強い町ができる。

 T :なるほど! 調べ方があまいとどうなるの?

みんな:自然災害に弱い町になっちゃう!

 T :そうね。じゃあこのカードを使って学んでいくことでどうなりそう?

Aさん:自然災害に強い町づくりが分かりそう。

 

 というやり取りがあり,カードを使って自然災害を学ぶことのよさを子どもたちは感じることができました。さらに,このやり取りを基に以下のようなカードゲームの基本ルールを設定しました。

 2時間目は,早速カードづくりです。子どもたちは,教科書や資料集,国土交通省の資料等を調べ,カードに書けそうなものを探していきました。

 どのようなことを書けばいいのか見通しをもたせるために,10分ほど調べたところで確認する時間をとりました。

 その時の全体での様子の一部を紹介します。

 

Dさん:水害が起こりやすい条件が分からなかった。

 T :誰か分かる人いる?

Eさん:理科の教科書の流れる水の働きでみんな実験しましたよね。球磨川と実験するときの川を同じような条件にして,ハザードマップと同じにして。そのとき,川が急激に曲がった所が水があふれたというのがありました。

Aさん:雪害なんですけど,前社会で日本海側が季節風の影響で雪が多いっていうのがあったので,日本海側が多いんじゃないかなと思いました。

みんな:あぁ!

Bさん:僕は資料集p119なんですけど。いろいろ書いてあって,例えば砂防ダムとか金地震速報とか…

 T :ちなみに砂防ダムって何に関わるのかな?

複 数:土砂災害!

 

まだ調べ始めたばかりですが,これまでの学びと関連付けたり,資料等の中から事実を見つけだしたりするような子どもたちの姿が見られました。

子どもたちの「カードを集めたい」という思いは,自然災害を学ぶことにつながっています。そして,カードを使う中で新たな問いが生まれ,国土の自然条件や公助について深く考えていくきっかけとなると考えています。

 今後も,カードゲーム作りを通して,自然災害が起こりやすい地形等の条件と公助の役割を考えさせていくことで,日本の国土を多角的に理解し,社会の形成者としての自覚を高めていきたいと思います。

 

さて,少し長くなってしまいましたが,いかがだってでしょうか?

今年度の熊大附属小の研究発表会はオンライン開催です。単元開きから前時,本時の動画と子どもたちに提示した資料やワークシート等も閲覧可能です。興味をもっていただいた方は,是非,下記URLからお申込みをお願いします。お待ちしています。

 イベント詳細 | 令和2年度熊本大学教育学部附属小学校研究発表会 (eventpay.jp)

 

熊本大学教育学部附属小学校 社会科部 村上 春樹

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