第6学年 「地球規模の課題と国際協力」 研究発表会の単元紹介

 地球規模の課題と国際協力 第1時間目

 

いよいよ本校の研究発表会が近づいてきました。

今年は,6年生社会科の最後の単元「地球規模の課題と国際協力」の実践を先生方に見ていただき,様々なご意見をいただければと思っています。

研究発表会当日まで,このブログを使って子どもたちの様子を紹介していきたいと思いますので,興味をもたれた方は,是非,本校の研究発表会にご参加いただければと思います。

申込はこちらまで→https://elem.educ.kumamoto-u.ac.jp/the_study/

 

さて,単元の話に入る前に少しだけ,今回の授業に対する私の思いを書かせていただきます。

学習指導要領の改訂から5年経過しました。

その中の,資質・能力の三つの柱において,

生きて働く「知識・技能」の習得,未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養

が示されていることはご承知のことと思います。

ここで,私が注目しているのは,「知識・技能」等についている枕詞です。

【生きて働く】知識・技能とありますが,このイメージが社会科では少し難しいのかなと思います。

例えば,江戸時代に結ばれた不平等条約である,「日米和親条約」「日米修好通商条約」とその内容について,教師が板書し,それをノートにうつして覚えるだけでは,【生きて働く】知識にはなりえません。以前の私の実践においては,そもそも働かせる場面が極端に少なかったと思います。テストや受験に知識が必要なことはわかります。しかし,受験に【生きて働く】では,文科省が言っていることとは違いますし,自分が解決したいという課題を解決するときに【生きて働か】せた知識の方が,すぐに忘れてしまう記憶ではなく,エピソード記憶として長くとどまるのではないかとも思っています。ただ,少なくとも私が以前行っていた社会科の授業は,そのような意識では行っていませんでした。

ところが,算数科をみてみると,円の面積を求める公式について「半径を1辺とした正方形の3.14倍になるんだ」ということを学んだあと,様々な問題を解きます。つまり円の面積を求める公式という知識を使って問題解決をしていく場面が当たり前のように設定されています。たとえそれが子どもの文脈にない教師から与えられたものだったとしても,活用することが前提となっているわけです。

しかし,社会科ではあまりそのようになっていないように思います。教科書には,単元の導入で問いをもつような場面が紹介され,その問いを解決するためのその後のページがあるといったつくりにはなっています。つまり,教科書会社も,どうにかして知識を生きて働かせるような工夫をしているわけです。しかし,以前の私はそのようなことに気付きもしませんでした。

そこで,今回の実践でもそうなのですが,提案したいことの一つは,「三つの資質・能力の枕詞の実現」です。

子どもたちが,生きて働かせたり,未知の状況にも対応できたり,学びを人生や社会にいかそうとする授業を提案したいと思っています。

そのために,重要となってくるのが単元の導入です。導入は,子どもがやってみたいことが明確になり,単元のゴールの見通しをもつことで,「どんな知識が必要か」「獲得した知識を使ってどう思考・判断し,表現するのか」を教師と子どもたちとで一緒に創り上げていく時間だと思います。もちろん学習内容がありますから,その方向付けは教師がしっかり教材研究をすることで,子どもの文脈を自然に導いていく必要があると思います。

 

 前置きが長くなりました。では,研究発表の単元の導入の紹介です。

 

1時間目(1/13) 【世界の様子を知り,自分にできることを考え始める】

 前時までに,子どもたちは「日本とのつながり」を中心に,世界の様々な国について調べていました。そんな中で,平均寿命や外務省の渡航情報を基にして,調べる国を選んでいる子どもがいました。二人ともアフリカについて調べていたので,二人の学びを関連付けながら前時に紹介し,本単元への導入へと繋げました。

 

T   昨日,ななみさんとはづきさんがアフリカのことを紹介してくれたでしょ。他にもそういうところがあるかもしれないというところで前回終わりましたね。

        みんなは,「世界がもし100人の村だったら※1」っていう絵本知らない?

CC    あ~知ってる!

    今日は,これのカードゲームみたいなのを見つけたんです。それをみんなでやってみて,世界のことがわかったらなって思います。だから,今日は,「世界がもし35人の村だったら」だね。

        今からカードを配るので,他の人には見えないようにしてね。

    自分だけ?

    そう。自分だけで見てね。

 

という感じで,「ワークショップ版・世界がもし100人の村だったら※1」を使って導入を行いました。

これは,世界の様々な国のことを調べているので,個別的に世界の状況について理解してきているのですが,もっと大きな視野で世界の様子を見ることができるようにするために行いました。そして,現在の自分たちの立ち位置を明確にするためです。

行ったアクティビティは大きく4つです。高齢化について,人口の偏りについて,識字率について,そして,富の偏りについてです。詳細については,著作権のこともありますので,割愛しますが,それぞれのアクティビティの後の子どもたちの反応を紹介します。

【高齢化について】

 C    世界的にみても高齢化が進みそう。

 T    うん。そうだね。

まさみ  みんな長生きになったんじゃない?

 T    あぁなるほど!

 T    じゃあ昨日やったアフリカはどうかというと… 日本がこれでしょ。アフリカは…

C C  おっ!

たくま  子どもが多い。

 T    3倍くらい子どもがいるね。ということは,50年後はどうなりそうかな?

まさと  アフリカに抜かれるんじゃない?

 T    うん。世界的に子どもが減っているからね。

 T   これで,分かったことは何かな?

       世界が高齢化してるってことと?アフリカが…

 C    未来が明るい。

 T    そうかもしれないね。

        先生のじいちゃんは兄弟が9人いるんですよね。

ゆうこ  うちのひいじいちゃんところもそうです。

 T    そうだよね。きっと昔の日本もアフリカみたいだったんだよね。

たくま  アフリカのお母さんには子どもがいっぱいいるってみたことある。

【人口の偏りについて】

けいた  やばい。

 T    何がやばいの?

けいた  なんか,食料が足りなくなりそう。

 T    なるほど。

ひかる  人口が増えると環境にも影響がありそう。

ゆうし  争いごと…

 T    なんで争いごとが起こりそうなの?

ひかる  食料!

 T    食料が原因で起こりそうってことね。

のぼる  水もやばい。

 T    あぁ水ね。

ななみ  きれいな水を届けるみたいなボランティアが…

 T    こういうのが心配なんだね。

【識字率】

けいた  やばい

 T    何がやばいってこと?

まさと  何が危ないかわからない。

のぼる  立ち入り禁止とかもわかんないよね。

 C    自分の身が…

 T    自分の身が守れない。自分の身だけ?

ゆうこ  家族とかも

 T    そうだね。でね,さっき人口に偏りがあったでしょ?

        この識字率もどうかなと思って調べてみたんだよね。どう思う?

C C  偏りありそう。

 T    うん。こういう状況でした。

ここみ  うわぁ~

 T    青いところが識字率が高いところで,薄くなったり,黄色や赤になると低いところね。

 C    アフリカが低い。

 T    そうだね。昨日ななみさんが言ってたのとどうかな?

ななみ  似てる。

まさと  中国の近くなんだろう?

 T    ななみさん,昨日アフリカが治安が良くない原因って何だった?

ななみ  言語がばらばらで,民族とか宗教とかで内戦が起きていました。

 T    そうだったね。言語が入り乱れるとどうかな?

ひろこ  話せないから,困ると思う。

 T    そうだね。その言語が入り乱れたのは,なんでだった?

ななみ  植民地化が原因かなって。

 T    なんか,つながりますね。

【富の偏り】

 T    言いたいことがある人

ななみ  何で均等に人を分けているのに,そんなに金額が違うのかわからない。

C C  うんうん!

まさと  何であそこだけ持っているんだ!

ゆうし  176倍もある…

 T    △のグループの人はどんな気持ちですか?

まりこ  何か,頑張り方の違いかな。

ここみ  怒りを感じる。

 T    この状況ってどういうことかと言うと,世界の富が均等に分けられていないってことなんだよね。

        世界のお金の0.5%しかもっていない人が20%いるってことなんだよね。逆に,別の20%の人が世界のお金の88%ももっているんだよね。

まさみ  これって現実ですか?

 T    世界のお金を集めたときに,一部の20%が88%持ってて,一部の20%の人は0.5%しかもっていないってことだね。

ここみ  おかしいでしょ。

 C    差が大きすぎる。

 T    日本人の多くは,ここ(△)です。

みやこ  えぇ~

こうき  やった。

ここみ  他のところから見たら,日本ってずるいなって思われているんだな…

 T    そうだね。さっきまで,○の人たちは△の人たちに対して,ずるいとか言ってたもんね。

のぼる  それが日本ってことだもんね。

 T    他は?

まさみ 同じ量とか,時間とか働いているだろうに,こんなに差があるのはおかしいと思う。

ゆうこ  貧困をなくそうとかSDGsにあったと思うんですけど,それが解決できてないから,どうかなって。

たくま  SDGsって,2千何年までだったっけ?

 T    2030年だね。

ここみ  え!?30年。

C C  無理じゃない?

 T    みんながちょうど二十歳だね。

C C  ほんとにできるのかな…?

 T    そうだね。2030年までに解決しようっていってるんだよね。さっきさ,日本は△のことろでいいねって言ってたけど,それで大丈夫?

こうき  いやダメだ。

まさと  だって,世界の目標だもん。

 T    このままじゃいけないって感覚はあるよね。○の人はさっきの感覚忘れたらいけないよね。

        88%の次も7%だからね。ここでも十分差が大きいよね。

 T    先生が思っているのは,交通渋滞の授業の時に,みんなが一生懸命考えて,大人が動いたでしょ?

        大西市長もこないだの選挙で交通渋滞の解消をマニフェストに入れてたの知ってる?

 C    本当に?

まさと  うん。入ってた。

 T    今回も,せっかく勉強するんだから,それで大人でも社会でも1ミリでも動かせたら,学んだ意味があるなって思うんですよ。それができたらかっこいいなって。

        SDGsも出て来たけど,これ,今よくテレビとかで見るもんね。

ゆうこ  確かに,0.5%の人たちが今のままでは生活できないから

 T   そうだね。この人たちがちょっとでもね,生活が変わるようにできたらいいなって。

       今,できることって思いつきます。

まさと  寄付。

けいた  募金。

 T    教科書にこういうことを解決しようと思っている人の話が載っているんですよ。

        参考になるかもしれないから,読んでみようか。

10分ほど教科書を読む)

 T    中村さんって元々の職業は何でした?

C C  お医者さん

 T    中村さんと同じことできそうですか?

たくま  いや…

のぼる  費用的にも難しい。

 T    なるほど。

        例えば,中村さんと同じように,貧困をなくすために,中村さんと同じようなことをしようって言って世界は動きそう?

C C  いや…

 T    そうだよね。

ゆうこ  なんか,ニュースでウクライナにカイロを送るって。

 T    なるほど。そういうことならできそうってことね。

        世界をよくするために,これぐらいならできそうじゃないですか?っていうのを考えるっているのはどうですか?

C C  うなずいている。

 T    それでは,振り返りに,こんなことをこの単元の中でやっていきたいっていうのを書いてください。

      それから,今日,カードを使いながらどんなことを考えたのかも書いてくださいね。

 

かなり長くなってしまいました…

このような感じで,地球規模の課題について調べ,自分たちにできることを考えるような文脈ができました。ただ,予想していた通り,子どもたちは即時的な支援にしか目が向いていないようです。

これからの学びの中でどのような変化が子どもたちに起きていくのかとても楽しみです。

 

このブログを見て,少しでも興味をもっていただけましたら,本校の研究発表会にぜひ,ご参加ください。

社会科だけでなく,様々な教科の動画を見ることができます。

ご参加,お待ちしています。

 

 




 

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※1:「ワークショップ版・世界がもし100人の村だったら第6版」(開発教育協会)

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