熊本市の渋滞問題解消を考える単元4時間目です。
本時は,子どもたちと設定した議会質疑(子どもたちが行う,互いの政策に対しての意見交換会)に向けて政策の仮決定を行う時間です。
政策の合意形成を図るためには,各グループで,政策に対して何を大切にしているのかが色濃く出てくるものと考えます。この「何を大切にしているか」を表出させ,全体で共有することで,より政策を多面的・多角的に捉えることができるようになると考えました。
導入では,これまでグループで話し合いをしていく中で,自分なりに政策を決めている児童二人を指名し,どのような基準で政策を決めたのかを語ってもらいました。
西・南区①はファストフード店周辺と百貨店周辺でできる渋滞の解消を考えており,なつきくんは,「売り上げ」という基準で百貨店周辺の渋滞の解消を選択していました。その理由を問うと,「売り上げが高いということは,たくさんの人が来ているということだから,それだけたくさんの人が有効活用できるから」と答えました。また,同じグループのみゆきさんは,混雑情報をネット上から調べ,そうした事実を基に,同じく百貨店周辺の渋滞解消を選択していました。これらの例を基に,政策を選ぶポイントを明らかにしながら話し合うことを共有し,活動に入りました。
【西・南区①】
まさみ まずファストフード店と百貨店どっちにする?
ななみ ファストフード店はいっぱいあるから,自分たちが住んでるところだけ解決しても意味ないよね。
まさみ でも百貨店だったら,もし百貨店を利用する人数がこれから少なくなっていったら,いい話じゃないけど,政策の意味がなくなるよね。百貨店に行く人が少なくなって,ファストフード店に行く人が多くなって渋滞する可能性があるから,利用人数とか売り上げはやっぱり大切だよ。
でも,コロナが3年も続いてるから,デリバリーとか普通になっていくのかな?今のお年寄りはあまりネット使わないけど,親の代はデリバリーとかしそうだよね。
ななみ ファストフード店か百貨店か…
まさみ でも,ファストフード店は世界中にあるじゃん。でも百貨店もつぶれてほしくないし…
15分ほど各グループで話し合い,どんなことをポイントに政策を選んだのかを全体の場で共有しました。
まりこ 私たちは今まで,渋滞しているところだけしか見てなくって,原因分析ができなかった。だけど,渋滞してるところがなんで渋滞してるのかって考えた。そういう風に広い範囲で見ることが,原因分析じゃないかな。
まさみ 私たちの班は二つの店で迷ってたんですけど,今も迷ってるんですけど,売り上げの推移とかを調べたり,平均の売り上げを二つの店で比べたりして考えた。
まなと 市電を地下に埋めるというのを考えているけど,熊本の地下水は地下30mくらいにある。福岡県の地下鉄の深さを調べてみたら,一番深いところで30mくらいで,ぎりセーフだった。
T 聞いてみたい班はないですか?うちら決まってないんだよねって。
いいよ。
ここみ 課題がありすぎて,話がまとまってなくて。東・北区は大きな題材を決めて考えなくちゃいけないんですけど,まだ,その題材も決まってない。
T こういうことってどうやって解決していったかっていうこと話してくれませんか。
ゆうこ 道路の口コミってどうやって調べればいいのかわからなくて,周りのお店の口コミを調べて交通状況がどうだとかあるから,そういうお客さんのニーズとかを調べたらわかりやすいんじゃないかな。
T 道路の口コミはわからないから,近くのお店の口コミを調べればいいんじゃないかってことね。
今の参考になりそう?
ひかる 口コミにこだわりすぎるのはよくない。
T どうして?
ひかる もしかしたら,口コミが意外と違う情報だったら…
T 信用できないってこと?
ひかる 古すぎるとか…
まなと Googleマップとか渋滞情報確認みたいなのがある。
まりこ 口コミに頼りすぎるのもあれだけど,自分以外に… 私たち国道3号線を調べてるんですけど,国道3号線を使っている人もいるから,最終的には使っている人の意見も取り入れて
T どうやって取り入れるの?
まりこ 自分では国道3号線をやった方がいいって思ってはいるんですけど,自分の意見だけじゃ,自分の意見を押し通すみたいになるから,実際会って話すっていうのができないから,頼りすぎるのもダメだけど,最終的にはそうなっちゃうんじゃないかな。
T 自分だけの意見じゃちょっと本当に熊本市民のためになっているのかが怪しいってことか。
今みたいな意見を参考にしながら東・北区のみんなも考えてみてね。
この全体での共有後,それぞれのグループでは以下のような話し合いがあったようです。
【中央区②】
中央区②は市電を地下に通す政策を考えているのですが,熊本市交通局のアンケートを基に要望が多かったバリアフリーについて考えていました。様々なバリアフリーの対策を調べる中で,「どんなところを変えてほしいかってのを聞いてみたいけど,聞けないから…」とつぶやいていました。
アンケートの事実を基に考えつつも,さらに客観的な情報を求めている姿は社会科らしさを感じます。
【中央区③】
渋滞の原因が本当に百貨店にあるのか,来客数や売り上げを調べる姿がありました。しかし,来客数が平成18年のものだったこともあり,「これでは…」と別の事実を探そうとしていました。
このグループも客観的な情報を求めていました。
【東・北区】
なかなか政策が決まらず,苦慮していましたが,はやとくんが「アンケートをとらないとわからない」と言い始めました。詳しく聞いてみると,「熊本市のホームページにどんな場所のどんなことで困っていてどうしてほしいかアンケートをとるのがいい」と言っていました。
やはり,このグループもです。
この時間,多くの子どもたちがこれまで漠然と自分たちの経験を基に政策を考えていたのですが,まりこさんの発言がきっかけになったのか,客観的な情報を求める声が方々からあがってきました。各グループで政策を決定するという状況になったことで,市役所職員という立場がはっきりしてきたのだと思います。そんな中,次のような班もありました。
【西・南区①】
やっぱりファストフード店の方が売り上げも多く,百貨店は赤字。でも百貨店を応援したい気持ちもある。
事実ではないところも大切にしようとする子どもたちの熊本愛を感じました。
終わりのチャイムが鳴りましたが,なかなか話し合うことをやめようとしない子どもたちの姿がありました。実は,はじまりのチャイムの前もずっと話していました。子どもたちは本気で政策を考えています。
今,折り返し地点です。子どもたちの本気の授業は続きます。
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