子どもたちが前のめりになって「日本全国の自然災害」について調べていく授業~日本の国土と自然条件に対応した公助について考える力の育成をめざして~③

 

更新が遅くなりました。今回は4時間目の子どもたちの様子についてお伝えしていきます。

 4時間目の導入では,みんなの振り返りをまとめた表を配り,互いの考えを共有する時間をとりました。先日ここにアップした内容です。はじめにルールの確認を行いました。その上で,しゅうくんの班のカードゲームの様子を話してもらいました。その後,そうまくんの3つの公助の役割について発表してもらい,のぶきくんとななこさんの困りごとを取り上げ,全員で「災害が起こった後の公助カードは必要か」について考えていきました。

 まずは,班で話し合わせました。しゅうくんたちの班の話し合いの様子です。

 

ゆうこ:強い町づくりのためだよね。

しゅう:ぼくは,災害の後に,次の災害に備えられるっていいことがあるでしょ。だから,これは,後も前も入れていいんじゃないかな。

ゆうこ:だって,前で治水してたとしても災害が起こることがあるでしょ。で,その後にレスキュー隊とかとか消防隊とか来なくって,何もなかったら,それって強い町っていえる?って思う。

しゅう:レスキュー隊も消防隊も後だもんね。

ゆうこ:後だよ。避難所とかも。

かりん:前でも後でもその時でもさ,人を救えるんだったら全部入れた方がいいよね。

しゅう:どちらも国とか県が出してるんだから,あっていいと思う。ていうか,前より後の方が多いんじゃないかな?

ゆうこ:わたしもそう思う! やれることは限られてるから…

しゅう:そうそう。後の方が対策のしようがあるから。

ゆうこ:後の方は起こってから助けるから,もしなしになったら限られちゃうし,現実的な町としてふさわしくない。架空だけど,現実的に。「災害に強い町」だから,災害が起こった後も強い町にしないといけないと思う。

しょうた:いいと思う。

 

このようなやり取りが各班の中で行われていました。しゅうくんの班は,全員が後の公助もカードに入れた方がいいと思っていたましたが,振り返りによると36人中22人が最初入れなくてもよいと考えていたようです。

5分程度の班での話し合いの後,全体でそれぞれの意見を出させていきました。必要と考えている子どもが少なかったので,先に発言するように促しました。

 

けんた:ぼくは必要だと思う。自然災害が起こった後に,人が倒れていて,それをほおっておくと,また死者が出てしまうので,必要だと思う。

 T :救助する公助が死者を減らすことにつながる。

しゅう:災害があった後に,その災害があったから対策をするというのがあるかもしれないから,そのつながりがあって対策があるからあった方がいいと思う。

あきな:しゅうくんはどちらかと言うと前だとおもうんですよね。なぜかと言うと,次の災害につながるんだから,未来に起こる災害の前の公助だと思う。

しゅう:でも,その災害があったから,その公助をしたんだから,後だと思う。

ゆうこ:しゅうくんの言っている後の公助がよくわからないので説明してもらえませんか。

しゅう:例えばAの災害があって,今まで備えていた公助が壊れてしまって,また公助をするじゃないですか。それは,Aの災害あったからこそできた後の公助じゃないですか。もしも,このAの災害がなかったらこんなことしなかったじゃないですか。

 T :そうまくんこれってあなたがいっている後の公助?

そうま:前と後どっちもあると思うんですけど。例えば熊本県で一番最初の災害にとっては後の公助になると思うんですけど,もし,Aの災害の前にあった災害の公助だとしたら,それは前の公助になるから…

 T :これから先にもし災害が起きるとしたら,Aの後の公助はそういった災害にとってはどっちになるの?

みんな:前

 T :ということは,しゅうくんが言っているのは,後の公助のこともあるけど,前の公助になることの方が多いってことでいいかな?でも,この災害があってからよりよい公助をするっていうのは大事な視点だね。前回の振り返りでかんなさんが書いていたことだもんね。

ひなた:災害があった直後に危険な場所とかをハザードマップとかを使って知らせるのも,人の命を守るために必要だと思う。だから,後のカードもいると思う。

ゆうこ:前の対策ばかりしていても地震が起きた時に,何もせずにほったらかしにしていたら,はたしてそれは強い町と言えるのかって班で話してたんですけど。やっぱり何もしなかったら,けが人とか,亡くなる人とかが増えていってしまうので,強い町っていうのは,災害が起こった後でもたくさん駆けつけて,被害を最小限にとどめるっていうのが強い町だと思うので,後の公助も入れていいと思う。

そうま:ぼくもゆうこさんに似ているんですけど,例えば,Aの町で災害があって,Aの町での亡くなった方が100人だったとして,Bでは50人だとすると,50人の方が強い町だと言えると思うんですよ。だから,前に対策をして災害を未然に防ぐことも大切だと思うんですよ。地震でビルが壊れて,挟まれて亡くなっていくというのは亡くなっている人が増えてしまうので,後のカードも必要。

 T :前のカードは災害を未然に防ぐだね。後のカードは?どんな言葉がぴったりかな?

そうま:被害を・・・

 T :被害を大きくしない?広げない?

あやこ:拡大させない。

 T :あぁ 被害の拡大を防ぐでどう? 反対派の人の意見はどうかな?

あきな:そうまくんが言ったように後から被害の拡大を防ぐっていうのも大事だと思うけど,前の公助をちゃんとやっておけば被害もそもそもそんな広がらないから,前のカードが必要だと思うし,災害が起こった後は建物の立て直しとか,ごみの処理とかだと思うから… 後も必要だと思うけど,優先順位は前だと思う。

 T :あきなさんはつくっていいの?

あきな:「強い町」だからなしだと思う。

のぶき:話し聞いてて,「強い」っていうのが分からない

ゆかり:班でもその話もしてたんですけど,私もはじめはあきなさんと同じ意見で。私も自分の視点で考えると,被害が全然でない町っていうのが強い町って思ってたんですよ。でも,自然災害っていうのは,防げないから,なるべく死者が出ないようにするけど,建物の崩壊とかは防げないじゃないですか。だから,災害の後に対しても避難指示とかを出して,そこも含めての強い町なんじゃないかなって思う。先生が怪我の話をしてたんですけど,怪我が早く治るのは怪我に強いとは言えないのかって考えて,私は必要派に意見が移りました。被害ができるだけ少なくするもの強い町って思います。

 T :強い町について他に意見ありますか?

ゆうこ:強い町っていうより,人に優しい町?災害が絶対に起きないわけじゃないから…

のぶき:強いっていうのがあるからこんがらがるのかな…

 T :どうしますか?このまま強い町で行くのか,強くて優しい?にするのか。

ひろし:被害が少ない

 T :被害が少ない町? それだとあきなさんどう?

あきな:それだったらいいと思う。

 T :じゃあテーマが「自然災害に強い町を考えるために…」だったのを,自然災害の被害を…?

みんな:(思い思いに…)

みつき:最小限!

のぶき:最小限…

 T :「自然災害の被害を最小限にできる町」でどうですか? こっちがでどうですか?

みんな:はい!

 T :カードにできること増えました?

たろう:だいぶ増えました!

 T :じゃあ今からカードゲームを一回して振り返りを書きましょう。

 

かなり長くなってしまいましたが,子どもたちがカードゲームを通して自然災害の公助の役割について考え,そのことで,自分たちが初めに設定した主題(テーマ)を修正していく姿をお伝え出来たのではないでしょうか。4時間目の振り返りを二人紹介します。

 

しずかさん

最初のぶきくんが公助と言うものは前にしかないと言っていました。一瞬自分もその通りだなと思ったのですが,先生が貸してくださった本の中に災害が終わったあとの公助の説明が書かれてあったのを思い出しました。のぶきくんのチームが発表するまであまり気にしなかったことだったので,とてもありがたく思いました。

 

ちえみさん

今日,私は災害が起こった後のカードはあきなさんと同じ前の公助をしっかりしていればそもそも被害は出ないと思っていたけれど,ゆうこさんの意見を聞いて,確かに必要かもなと思いました。また,カードゲームでは前回よりも「この公助って守れるかな」と話し合う時間が増えたので,次回はもっと考えさせられるようにカードを出したいです。

 

 しずかさんは,素通りしていた情報も友達の発言によって立ち止まって考えることで,その情報の価値に改めて気づかされることに「ありがたく思う」という締めくくるところから,対話的な学びを行うことのよさを実感しているのだなと思いました。

ちえみさんのように考えが変わったと書いている子どもはとても多かったです。さらに,カードゲームが子どもたちの自然災害を学ぶ意欲を高めていることが分かる記述を書いていたので,とてもうれしく思いました。

 

今回は,子どもたちの対話の様子を基に授業紹介を行いました。子どもたちが活動の中で生まれた問いを対話の中で解決しながら学んでいく様子が少しでも分かっていただけたかなと思います。

 

さて,繰り返しになりますが,今年度の研究発表会はオンライン開催です。単元開きから前時,本時の動画と子どもたちに提示した資料やワークシート等も閲覧可能です。このブログに興味をもっていただいた方は,是非,下記URLからお申込みをお願いします。

 

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熊本大学教育学部附属小学校 社会科部 村上 春樹

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